3話 保険医療は患者サイドに立っていない

保険診療は患者が損をする仕組み

埼玉県在住の田中努武さん(歯科医師)は2013年にセミナー受講をスタートされ、2018年9月に保険医を辞めました。
他の歯科医師と同じように保険診療への疑問でストレスを抱えていたそうです。

「近年思うのは保険医療への疑問です。
現在の歯科医療はどう見ても患者サイドには立っていません。

例えば、かかりつけ医制度というのが一時期ありました。
それは、かかりつけ医になると保険点数が多くもらえるのです。
しかし、その分患者さん側は多く支払わなくてはなりません。
普通の感覚だと、かかりつけ医に行くのですから安くするべきですが、かかりつけ医は初診料にさらにプラスして多くの請求をすることができるのです。
患者さんは気付かないうちにお金を多く払わされているということです。
治療費の面から考えれば、患者はかかりつけ医を作らずに、あちこちの歯医者にかかったほうが得だという仕組みなのです。
かかりつけ医制度だけでなく、保険点数のあり方もおかしなところがたくさんあります。
国の方針によってコロコロ変わって、医者も患者も振り回されています。」

「患者」ではなく「医療者」を守るための健康保険制度

田中さんは、更に次のような指摘もしています。

「個別指導(健康保険制度の中で医療者が国から受ける指導)を受けるとき、カルテを見ていろいろ言われるのですが、
『カルテにいろいろ書くのは医療者側を守るためだ』
と技官が言うのです。

それはおかしいですよ。
カルテとは元来患者を守るためのものです。
しかし、国の認識は逆で、何かあった時に患者に訴えられても医療者を守るために書くものだ、というのです。

また、総入れ歯を作るとき、当月分の保険点数の平均点が増え過ぎないようにするために、月を分けて上顎の義歯と下顎の義歯を別々に作るとか、本来は処置をしなければならないところを保険請求できないからやらないなど、保険診療の制約のために患者には不利なことを押し付けられています。
ですから医療者自身も自分の意思とは関係なく、患者を守らない制度の中に組み込まれて働かされているという具合です」

※保険点数が高いと歯科医院が国から指導を受ける羽目になるため、それを避けるためにはわざわざ月を分けて入れ歯を作らなければならない。