「歯はセンサー」、歯の症状の原因は口の中にあるのではない
フリーマンを目指し、宮原さんと同じく保険診療を辞めた歯科医師がいます。
神奈川県で歯科医院を営む小嶋敦さんです。
小嶋さんは腕の良い歯医者として地域でも評判で、かつて医院はいつも患者で溢れていました。
しかし、保険診療を辞めた今は予約制で、1人に1時間以上たっぷり時間をかけて患者と向かい合っています。
しかも、実際に歯に触っている時間よりも患者さんと話をする時間のほうが長いのです。
それは傍から見ると歯医者というよりは人生相談のような光景です。
時には、小嶋さんと話をするだけで帰って行く患者さんもいます。
小嶋さんは一体何をやっているのか。
彼が目指しているのは、「CW歯科」なのです。
歯の症状の原因は口の中にあるのではなく患者自身の考え方や人生観、環境などが関わることで、精神や気持ち、さらに体が影響を受けることで、様々な症状が発症するのです。
歯の症状を良くするには、症状の元の原因となっているそうしたことにアプローチする、という考え方に基づいてコミュニケーションを第1とした治療を小嶋さんは行なっているのです。
前述の宮原さんも話していた「歯はセンサーである」という認識を前提に、「歯が訴えているのは一体どんなことなのだろう?」と、患者さんと一緒に考えながら対処していくのが「CW歯科」です。
患者さんが黙って治療台に座れば歯医者が歯を削ったり詰め物をしたりする、というのが従来の歯科治療だとすれば、それとはまったく異なるものです。
これまで他にないそんな考え方や治療方針を伝え、そんな治療を受ける準備ができているかどうか、その上で受けるかどうか、全てを患者さん自身に決めてもらうのです。
全て国が決めたとおりにやらなければならない保険診療とはまったく正反対のやり方です。
現在のスタイルに変えてから経済的には収入も減り、決して楽な経営ではなくなりました。
それでも、小嶋さんが大盛況だった従来の保険診療から現在のスタイルに切り替えることを決心したのは、娘さんがきっかけでした。
愛娘が多発性硬化症という難病に
小嶋さんの愛娘が10歳の時、多発性硬化症という難病に侵されたのです。
全身麻痺で寝たきり状態になってしまい、主治医からステロイド剤による治療を行なうと告げられました。
しかし、自らも医療者である小嶋さんは薬の副作用を懸念し、ステロイド治療を拒否しました。
病院側は小嶋さんを「育児放棄」と見なし、親権はく奪の訴えを県に起こそうと動き出したのです。
「児童相談所から病院の治療を受けないのなら娘の親権を剥奪すると言われました。
しかし、ステロイドの怖さを知っていたので、なんとか娘を守りたいと必死でした。
ちょうど娘が発病する数ヶ月前に、伊東先生のセミナーを受講していたのです。
今考えるとそれは本当にラッキーでした。
この経験で、医療は、国は、決して個人のことを考えているわけでも本当に良くしようと思っているわけでもないということを、身をもって実感したのです。
それまで、伊東先生のセミナーで聞いていたことでしたが、娘のことがなければ自分ごととして捉えることができなかったと思います。
そして、娘を守ることもできなかったと思います。
セミナーを受講している医療者仲間の協力を得て、ステロイド治療を行なわない病院を見つけ出し、そこに入院させるということでなんとか娘を奪われることは免れました。
佐賀県にあるその病院にも伊東先生にお願いして来ていただき、娘の脳の情報を読んで調整の指導をしていただきました。
そして、退院できるまでに回復したのです。
それからは、伊東先生に協力していただき、当初は寝たきりだった娘が車椅子で移動できるようになり、やがては自力で歩くことも出来るようになったのです。
そして、薬にも医者にも頼らずに学校に復帰できました。
保険治療に不満を持ち、行き場がなくなっている人は多い
娘のことがきっかけで、現代医療に見切りをつけ、伊東先生の指導する『歯や口の中の症状に対して本人が望むなら、読脳で根源的原因を探求し、自ら解決できるように協力する-CW歯科』を目指すようになりました。
これまでの医療にはない分野ですから、CW歯科を一般に広げていくには地道な活動と時間が必要だと思います。
しかし、求めている患者さんは現実にはたくさんいるはずです。
それは私が保険診療をやめたからこそ、気づけたことです。
伊東先生から『CW歯科を求めている人はたくさんいる』と講義の中で聞いていましたが、保険診療をやっていた頃は、正直『そうかなー? 』と思っていました。
その頃関わっていた患者さん達は人任せで、求めているようには思えませんでしたから。
しかし、今はそれが本当だと分かりました。
保険治療に不満をもって、行き場がなくて困っている人は本当に驚くほど多いのです。
それに応えることができれば、大きなやりがいと幸せ感を得ることができます。
今、患者さんと向き合うことが楽しいです。
治療が終わった後、患者さんにも『楽しかったですか? 』と質問します。
『楽しかったです』という笑顔が返ってきます。
不安の塊のような顔で来院された人が、1時間やそこらでこんなに変化するのかと驚きます。
元患者のスタッフ達が、自分らしさを取り戻している
経済的にはまだまだ厳しいですが、それでも保険診療に戻りたいとは思いません。
保険診療をやめてから、いくつもの壁を乗り越えてきました。
今、自分の前に立ちはだかる経済の壁もいつか乗り越えることができると思っています。
これが、人生であり、生きるということだと思っています。
来院される患者さんも、歯や口の中の症状を訴える背景に、それぞれの人生の行き詰まりを抱えており、そんな患者さんに向かい合うには、自分自身が壁を乗り越え、人生を切り開いていいける人間にならなければと思っています。
CW歯科を始めてから、患者さんとして関わった人がスタッフとして手伝ってくれるようになりました。
アロマセラピストだった森さんはうつ病で10年間苦しんでいました。
歯の症状がきっかけで来院され、その後スタッフとして働くようになりました。
1年ほどであれほど苦しんでいたうつの症状がすっかり消え、今は活き活きと人生を楽しむ日々です。
『今思えば、病院に通えば通うほど悪化していったのは薬が原因だったのかもしれません。ここで働くようになって、小嶋先生との何気ないやり取りの中で癒され、薬をやめることができたのが良かったのだと思います』と語ってくれました。
もう1人のスタッフ中嶋さんは、自分が思っていることを言わずに我慢してしまうため、どの職場でも終わ感を持って毎日を過ごしていたそうです。
でも今は、『自分の居場所はここだ! 』と思っているそうです。
『小嶋先生は、初めて私に向かい合ってくれた人でした。
周囲に理解してもらえず自分の殻に閉じこもっていた私を見つけ出してもらえました。
私は本当の自分をずっと隠して生きてきました。
それは、本当の自分を出すと世間から変な人と言われると思ったからです。
自分を誤魔化して周りに合わせ、ずっと自分の居場所がないと感じていました。
でも、今は逆に自分を誤魔化すことができない空間にいます。
そんな空間で自分と向かい合い、そして私と同じように本来の自分を掴みたいと求めている人との出会いの場を創りたいです。
そんな思いから “自分印” というブランドで商品づくりを始めているところです。
自分らしい本当の生き方をこの場から発信していきたいです』
CW歯科を目指すことで、小島歯科が患者さんやスタッフにとって、そして何より私にとって、自分らしく生きていく場になっていければと思っています」
小嶋さんの愛娘、彩水さんは現在、 読脳アカデミー・CWインターナショナルスクールで勉強中です。
読脳を学び、自分自身で病気を克服し、同じ病で苦しんでいる世界中の人々に協力したいという思いを形にするため、往復4時間以上をかけて新宿まで通っています。